「それは、わかるけれど。でも、帰らなくてもここから通えばいいと思うよ。今だってそうしてるよね?」
「そうなんですけれども、親子の会話の時間もあまりとれないので、私も少し寂しくて……」
両親の顔を思い出して涙ぐみそうになる私を抱きしめて「気がつかずにごめんね」と謝ってくれました。
「守っていただきながら、わがままを言って申し訳ありません」
レイ様の宮に保護してもらっているのは私が誘拐されそうになった上に怪我をしてしまったから。それをいいことにレイ様の厚意に甘えてしまっていたから。
「ローラが謝ることはないよ。このままずっとここにとどめ置いてしまいたいけれど、ローラの両親にも寂しい思いをさせていることになるね」
私の髪を撫でながら何事か思案しているレイ様。長い指が髪を梳いていきます。もう慣れてしまった動作に心が凪いでいきました。
両親との時間を作りたい。でも、レイ様とも離れたくない。
相反する気持ちがせめぎ合って、どうしようもないジレンマに陥ってしまう。



