「本当に? ローラは幸せ?」
「はい。幸せですよ。私が家に帰ると言ったのは両親と過ごす時間も欲しいと思ったからです」
おもむろに顔を上げたレイ様の表情には、心配が杞憂に終わった安堵感とどことなく寂しさを含んだような複雑な感情が見え隠れしてしています。
「両親と過ごす……」
「そうなのです。結婚後は両親と会う機会はなかなかないでしょう? ですから、結婚までは両親と暮らして親孝行もしたいのです。それに温室の管理や研究の事もあります」
研究に関しては時間をいただいているので、さほど問題ではないのですが、両親が、特にお父様がとても寂しがっているのです。邸にいるのは数時間。研究室に籠れば両親に会う時間も限られてしまいます。
『もう行ってしまうのか』なんてお父様のしょんぼりした顔を見ると申し訳ない気持ちにもなってしまって、どうしようかと悩んでいました。



