「それでは、何か気に入らないことがあったとか? 愛情が足りないとか、甘やかし方が足りないとか、愛し方が足りないとか、それとも……」
レイ様の言葉を聞いているうちにどんどんと顔が赤くなっていきました。真剣に考えているレイ様ですが、思考が斜めにいっているような。
「レイ様。身に余るほど、愛情も十分に頂いていますし、これ以上はないくらいに甘やかして頂いていますから、不足などありません。安心してくださいね」
不満があって帰りたいと言ったわけではないので、レイ様の早とちりです。
「本当に? 俺に不満があるとかではなくて?」
ジッと私の瞳を覗き込むレイ様の憂いを纏った表情に胸がキュウと締めつけられるように切なくなりました。愛おしさがこみ上げてきて知らずにレイ様を抱きしめていました。
「毎日が幸せですから不満なんてありません」
レイ様の艶やかなバーミリオンの髪を撫でます。気持よいというかすごく安心するというか、
温かな情愛が芽生えるというか不思議な感覚。いつもは私が撫でられる側なので気がつきませんでした。
そして撫でられるままになっているレイ様が何だか可愛くて、なお一層、愛しさが胸いっぱいに広がっていきます。



