「お姉様、どうでしたか?」

 今日はリリアさんの侯爵夫人教育の日。カリキュラムを終えたリリアさんは早々に帰宅している。少々疲れた顔はしていたけれど来た時よりも帰る時の足取りは軽かったわ。

「まあまあね。この前よりはましになったかしら」

 紅茶を飲みながら姉が答える。あれからカリキュラムを大幅に見直して組み直した。そのかいあってか、さぼり癖がつきそうになっていた彼女がやっと前向きになってくれた。それだけが要因ではないけれど。

「そうですか。進歩があるのなら良いことですわ」

「そうね。カメの歩みよりも遅いかもしれないけれど。こちらの忍耐が試されるわね」

 姉は薄く微笑むとカップを置いた。

 忍耐。
 そうかもしれないわ。覚えが良いとは言えずやる気もあまりないリリアンさん相手にこちらがどれだけ辛抱強く付き合えるか。ある意味、挑戦でもあるわね。
 姉の表情を見れば悲観的でもないようだから、大丈夫なのでしょう。わたくしも頑張るわ。