婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

 
 
 理解しがたい感情を振り払うように、池に目を向けました。私たちは花を観に来たのです。本来の目的を忘れるところでした。

 豊かに茂った緑の葉の合間から蕾がいくつも顔を出しています。
 朝日が昇る直前、固く引き結んだ花びらが綻んでくる時間まで、ほんの少し。

「冷えてきたね。もうちょっと、こっちにおいで」

 そういえば……さっきよりも寒くなったような。

 ぶるっと寒さで震えると思わず腕をさすりました。明け方が一番冷えるというのは本当ですね。

 私の仕草を見逃さなかったレイ様が、起きた拍子に離れていた隙間を埋めるように、腰に手を当て私を引き寄せました。