理解しがたい感情を振り払うように、池に目を向けました。私たちは花を観に来たのです。本来の目的を忘れるところでした。
豊かに茂った緑の葉の合間から蕾がいくつも顔を出しています。
朝日が昇る直前、固く引き結んだ花びらが綻んでくる時間まで、ほんの少し。
「冷えてきたね。もうちょっと、こっちにおいで」
そういえば……さっきよりも寒くなったような。
ぶるっと寒さで震えると思わず腕をさすりました。明け方が一番冷えるというのは本当ですね。
私の仕草を見逃さなかったレイ様が、起きた拍子に離れていた隙間を埋めるように、腰に手を当て私を引き寄せました。



