「これで、ロジアム侯爵家との結婚も吹き飛んでしまった。陛下の声がかりだったのだがな。ユージーン殿下は近いうちに騎士団総帥へ就任する。その際にはトーマス殿は幹部に昇格し叙爵も行うとの話もあったのに。良縁もなくなってしまった」
「そ、そんなこと、知りませんでしたわ」
「これは内々の話だからな。総帥に就任して初めて発表される案件だから、知らなくて当然だ」
両親が爵位を継ぐわけでもない三男の結婚に積極的だった理由がやっと分かった。
可能性ではなく、すでに地位が保証されていたからなのね。いまさら、気づいても遅い。
見果てぬ夢。
愚かな夢を見たばかりに最悪の結果になってしまった。
せめてエマに殿下と恋仲などと嘘をつかなければよかったのかもしれない。そもそも嘘をつかなければよかった。後悔の念は、あとからあとから湧いてくるけれど、今となっては取り返しがつかない。



