「……わたくしは何もしていないわ。嘘をついたことは悪かったと思っております。けれど、エマに誘拐しろだとか一言も言っていないわ。お父様、信じてくださいませ」
わたくしは両手で顔を覆うと泣き出した。
「言った、言わない。それは問題ではないのだよ。そなたが見栄を張って嘘をつくからだ。疑う余地のないくらい迫真の演技だったのだろうな。それとも、主人可愛さに目が曇っていたのか。エマは今でも信じているんだぞ。そなたとレイニー殿下の事を。お嬢様からレイニー殿下を奪ったフローラ嬢が憎かったと言ってな」
お父様はソファの背に凭れて天井を見つめた。
「あなた」
そっとお父様の手に手を重ねたお母様の目にも涙が光っていた。
次々と糾弾されて頭の中がぐちゃぐちゃで心の整理ができない。
どうすればよかったの?
夢を見たかっただけよ。夢を共有するくらい許されると思ったのよ。



