「泣いてもどうにもならん。泣きたいのはわしたちの方だ。エマは盗賊達にフローラ嬢を誘拐させ行方不明になれば元々恋仲だったそなたとレイニー殿下が結婚できるだろうと計画したそうだ。それが今回の誘拐未遂事件の真相のようだな。それこそ未遂ですんでよかったが、だからと言って罪が軽くなるわけではない」
「そんな……わたくしの結婚……のために……」
エマがそんなバカげた計画を立てるなんて。
わたくしは何も知らなかった。そんな素振り一つなかったわ。
相談していてくれたら、止めさせたのに。
なんて浅はかなの。
「ああ。そなたの嘘を信じた健気で心優しいメイドがやったことだ。せめて、メイドの私怨であれば解雇ですんだのだがな。主人の狂言が原因で犯行に及んだとなれば、悪質であるとみなされるだろう。わしらとて無傷ではいられないだろう。何らかの処罰が下されるはずだ」



