「心配しなくてもいい。そんなことはしない。いじめたのはビビアン、そなただとわかっている。証人がいるからな」
「いじめって?」
それこそ身に覚えがないわ。誰がそんなことを言ったの?
「心当たりはないのか? 随分と酷い言葉でフローラ嬢を詰っていたそうではないか。誹謗中傷を何度も繰り返してフローラ嬢をいじめていたと証言があるのだがな」
「誹謗中傷って、少し言葉は過ぎたかもしれませんけれど、間違ったことは言っていませんし、忠告めいたことは言ったかもしれませんが」
あれが誹謗中傷って、ちょっとした嫌味くらいではないの? 社交界だって嫌味や当てこすり、悪口なんて日常茶飯事でしょうに、わたくしだけが悪者になるのはおかしいわ。
「睨みつけたり脅したり、聞くに堪えない言葉を投げつける。それはいじめではないのか? 日頃からフローラ嬢を敵視していたそうだな」
「うっ……ううっ……」
同情のかけらもない冷ややかにたたみかける厳しい言葉にどうすることも出来ずに、涙がこぼれてしまった。お父様はわたくしの味方ではない。



