「それから、フローラ嬢にいじめられていたそうだな。教科書を破られたり突き飛ばされたり、権力を使って殿下との仲も邪魔されていたとも聞いた。これも初耳だったが、事実であれば由々しき事態。ブルーバーグ侯爵家に事実確認を行い場合によっては抗議と慰謝料も請求するが、いいのだな?」
さらに突きつけられる架空の事件。顔面蒼白になった。わたくしのついたいくつかの嘘が巡り巡って己に帰ってくる。こんなはずではなかったわ。結婚が決まるまでの間、ささやかな夢を見ていたかっただけなのに。
「い、いや……」
左右に首を振るだけで言葉にならない。
お父様の容赦のなさと鋭い眼光にじりじりと崖っぷちに追いつめられていく感覚に手の平の脂汗で扇子がぬめっていった。
お母様は沈黙を保ったまま、助けてくれない。



