婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

 
 
 慈しむような声音で囁きかけたレイ様は私の肩を抱き寄せました。

 レイ様の体温が肩越しに伝わります。

 温かい。

 
「レイ様もちゃんと羽織って下さいね」

「うん。気遣ってくれてありがとう」

 レイ様の穏やかな眼差しが眩しくて、幸せな気持ちが心の中を満たしていきます。

 知らずに胸の奥にこみ上げてくるものが、鼻の奥がツンとして涙ぐみそうになりました。でも、グッとこらえます。

 
 愛おしい。

 そんな思いが心の中をよぎりました。この芽生えた感情は何なのか……


 ほんの少し、ほんの少しだけ……ほんの少しの間だけ……

 私はレイ様の肩に、寄り添うように頭を預けました。