けれど、そんな望みも一瞬にして打ち砕かれた。 レイニー殿下が馬車の方を向き直って手を差し伸べる。誰かが中にいる。一人ではないと悟った時に殿下の手を取り中から出てきたのは、フローラだった。 「きゃあ」 今度は黄色い歓声が上がる。 レイニー殿下のエスコートで地に降り立つフローラは堂々としていた。 殿下と向き合うと恥じらうような仕草を見せる様は二人の親密な関係を物語るようで、群衆達には微笑ましく映るかもしれない。 居合わせた生徒達は二人の様子に眼福とばかりに憧れの眼差しで見守っている。