なぜこんなことをするのか。
目の前で起こっている惨事に体が強張って頭が働きません。
何が起きたのか理解する間もなくバンッと乱暴に馬車のドアが開け放たれました。
驚いて音がした方に顔を向けると見たこともない男が、馬車の中に入ってくるところでした。
「どなたですか?」
かろうじて声を出すことが出来ました。
ぼさぼさとした髪に無精ひげ、浅黒い肌、服は所々擦り切れていていました。見るからに真っ当な風貌には見えません。
「やっぱ、貴族のお姫様は違うねえ。身なりもいいが、いい匂いがするぜ」
へへへっ。
下品に笑う男は血走った眼で私を舐めるように見回して品定めをしているように見えました。



