急ブレーキをかけた馬車が止まり、とっさに手摺を掴んで床底に投げ出されたのを防ぎました。
「どうしたのかしら?」
まだ、街中。
邸まではもう少し時間がかかります。いきなり止まってしまったことを不思議に思っていると、
「お嬢様。申し訳ございません」
御者のヨハンの声がして、ドアが開きました。
「どうしたの?」
「リンゴを積んだ荷車が荷崩れを起こしまして、道路に転がっているようで、拾い終えるまで今しばらくお待ちいただけますか?」
「ええ。大丈夫よ。それにしても大変ね。私も手伝おうかしら」
「いえ、いえ。お嬢様にそんなことはさせられません。ワシも手伝いますんで、お嬢様はここでお待ちください」
恐縮するヨハンにかえって足手まといになるかもと思って諦めました。人手は多い方がいいでしょうから、名案だと思ったのですけれど、残念です。



