「そんな状況だったから、婚約発表の時期を繰り上げたり、学園でもなるべくわたくしのそばについてくれたりとできる限りのことを殿下はしてくれたの。令嬢の誘いもすべて断っていたわ」
カランと音を立ててアイスティーの氷が溶けて中に沈んでいき、雫がコップを伝って流れていきました。
「婚約を発表してからは、随分と静かになったけれど。あの頃は何だったのかしらね。何かに操られてでもいたのか、陰謀論まで出るくらい異常だったのよ。でもね、その中でも変わらずに殿下はわたくしを愛してくださっていたし、わたくしも殿下への愛があるから乗り越えられたのだと思うわ」
にこりと笑ったアンジェラ様の瞳には揺るぎない信念が宿っているように見えました。
「フローラちゃん、泣かせるつもりはなかったのよ」
知らずに頬を伝っていた涙。
アンジェラ様が慌ててハンカチを当ててくださいました。
「申し訳ありません」
ハンカチを手に取ると目元の涙を拭いて気持ちを落ち着けました。
アンジェラ様が経験した事に比べれば、私の問題などちっぽけな事。取るに足らないもの。



