「良い縁談? 何のことかしら?」
「あら、わたしの聞き違いだったのかしら? ある侯爵家の令息との縁談ですわ。相手の侯爵家も名門で令息も将来有望な騎士だとか。両家ともとても乗り気だそうですわね? よかったですわね。結婚は祝福されてこそですもの」
「どこからそんなことを聞きましたの?」
いやに具体的。家名を言わなくても特定できるわ。もうみんなに知れ渡っているの? 婚約を結んでもいないのに、噂が先行するなんて。
「さあ、どこでだったかしら? 先ほども言ったように小耳にはさんだだけですわ。でも、噂は本当だったようですわね」
ディアナは扇子で口元を隠すと目を細めた。



