呼んでも聞こえるのは規則正しい呼吸だけ。

 震える手で頬に触れる。

 いけないことをしているのはわかっているのに、止められなくて。


『大好きだよ。愛している』 

 先ほどのレイ様の言葉が甦りました。
 真剣で熱を孕んだ瞳が忘れられなくて、伝えられずにはいられませんでした。

 今だからこそ言える。

 自分の本当の気持ちを……熟睡している彼はきっと知らない。
 だから、今だけ。私の気持ちをのせて。

 
「レイ様が好き。大好き」

 レイ様の寝顔を見つめながら、そして、吸い寄せられるように彼に口づけました。

 重ねた唇はほんの刹那。シトラスの香りが鼻を掠めていきました。


 大それたことをしてしまったと気づいた時には唇を重ねたあと。

 柔らかな感触がいつまでも私の唇に残っていました。