感心した声に振り向けば、大きな鯉がぴちぴちと尾びれを動かして陸の上で跳ねています。
勢いで水滴が飛び散っていますが、お構いなしに目を輝かせて鯉を眺めているリッキー様。
マロンは早々に避難して、レイ様の肩の上で怯えています。
そばで控えているエイブや護衛騎士達の忍び笑いが漏れ聞こえて、思わぬ愉快なハプニングに笑いの輪が広がって、和やかな雰囲気になりました。
「早く水に戻してやらないとかわいそうだぞ」
「うん。わかった」
そういわれてリッキー様とエイブが、袖をめくります。
跳ね回る鯉を捕まえるのに少々手こずりながら、川へと戻しました。
水を得た魚というのはこういうことを言うのでしょう。本来の居場所に戻った鯉は水の感触を確かめるように数回ゆっくりと旋回して、やがて川の奥へと消えていきました。



