「ローラ。あまり急ぐと転ぶよ。気をつけて」
背後から気遣う声が聞こえます。
振り切れずとどまることを選んでしまったのは、レイ様に未練があるから。ここにいてはいけないと思うのに、隣で微笑んでいるレイ様が好きだから。ローラと呼んでくれる愛称が特別だから。
「大丈夫です」
いつもと変わらない態度に安心して嬉しくて、でも、どこかもの悲しくて……
「ほら、見て。お魚がいっぱい」
リッキー様が興味津々に川を覗き込んでいます。
幾種類もの魚たちが縦横無尽に泳ぎ回っている様は壮観です。マロンも川の淵に来てジーと眺めている姿はリッキー様と同じ。動き回る姿を目で追っています。
「マロン。魚はお前の獲物じゃないからな。獲るなよ」
いつの間にか追いついたレイ様が注意をしていますが、当のマロンは聞こえていない様子。
物珍しいのか魚たちに目が釘付けになったまま、その場を動こうとしません。



