婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています


「ローラ。あまり急ぐと転ぶよ。気をつけて」

 背後から気遣う声が聞こえます。
 振り切れずとどまることを選んでしまったのは、レイ様に未練があるから。ここにいてはいけないと思うのに、隣で微笑んでいるレイ様が好きだから。ローラと呼んでくれる愛称が特別だから。
 
「大丈夫です」

 いつもと変わらない態度に安心して嬉しくて、でも、どこかもの悲しくて……

「ほら、見て。お魚がいっぱい」

 リッキー様が興味津々に川を覗き込んでいます。
 幾種類もの魚たちが縦横無尽に泳ぎ回っている様は壮観です。マロンも川の淵に来てジーと眺めている姿はリッキー様と同じ。動き回る姿を目で追っています。

「マロン。魚はお前の獲物じゃないからな。獲るなよ」

 いつの間にか追いついたレイ様が注意をしていますが、当のマロンは聞こえていない様子。

 物珍しいのか魚たちに目が釘付けになったまま、その場を動こうとしません。