「ローラもおかわりしていいからね」
「……いえ、一個で十分です」
からかい気味な声でレイ様が笑っています。レイ様の元には紅茶のカップだけ。
テーブルに肩肘をついてリッキー様を見て、そして、私を。
会話のない方が、食事に夢中になっている方が、気が楽だと思っていましたが、時間稼ぎになると思っていた自分の考えが浅はかだったと身に沁みました。
熱を持った瞳が私を見つめている。
感じる視線に気づかないふりをして、紅茶に手をつけました。
沈黙の時間がこんなに神経を使うものだったとは思わなかったわ。
それに自分から沈黙を破る勇気もなくて、レイ様が送る熱い視線に耐えながら、時々、美味しそうにケーキを頬張るリッキー様の様子を眺めて、やり過ごしていました。



