フローラ嬢。ブルーバーグ侯爵令嬢。
これからのことを思えばその方がいいのでしょう。
けれど、急に遠くなった距離感にショックを受けている自分がいました。これに慣れなければいけないのかと思うとズキッと胸が痛みます。
ドレスを握りしめてどう答えればいいのか迷っていた私にスッと影が差しました。
「これからもローラって呼ばせてくれる?」
力が入った手にそっと触れたレイ様の手。
「……はい」
これ以上は抗えませんでした。
「俺のことはこれまで通りでいいから。これで、おあいこだね。さあ、おいで」
レイ様の温もりに力が抜けて、触れたところから熱が灯っていくよう。
用意された椅子に座るとレイ様が微笑んでいました。



