婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています


「今夜はこれで眠れますね」

 ちょっと茶目っ気を出して、冗談めいて言ってみました。

「まだ、眠れないかな? だから、もうちょっとだけつきあって?」

 一曲では足りなかったのかしら?
 
 レイ様と踊るのは楽しくて一曲で終わりにしたくなくて、頷きました。
 踊る準備をと思ったら、手を引かれて行ったのは先ほどのベンチです。

「話があると言ったのは覚えている?」

 腰を下ろしたレイ様はまっすぐに私を見つめていました。そういえば、先日も言われたような気がします。ダンスではなく話がしたかったのね。

「はい」

 また逃げ出すとでも思っていらっしゃるのか、真剣な表情のレイ様は私の両手をしっかりと握りしめています。

 先日は完全なる私情で逃げましたが、今回はそんな心配はいらないと思うのです。
 どんな内容か想像もつきませんけれど、逃げ出すような事はないでしょう、きっと。

 お菓子の話かもしれませんし、厨房の調整ができたとか、現実逃避しているような感は否めませんが、妙な邪推はいけませんよね。

 覚悟を決めました。