婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています


「もうそろそろ、離して頂いても……」

「いやだ。また、逃げられたらいやだからね。離さない」

「逃げませんよ」

 たぶん。心の中でつけ加えて返事を返しました。それでもレイ様は納得していない様子。

「この前だって逃げたでしょう? なぜ? 話があると言ったのに」

「あれは……時間がなくて、あ、あの、あの……どうしても……」

 あの日の事を思い出して、みるみる顔が朱に染まっていきます。レイ様への気持ちを自覚しましたなんて言えるわけもなくて、どう言い訳をしたものか、あたふたする私に何かが覆いかぶさったかと思ったら、レイ様に抱きしめられていました。

「レイ様」

「嫌われたわけではないよね」

「はい。嫌っていません。そんなことあるはずはありません」

 だって、私はレイ様が大好きなのですから。

「よかった。ローラに嫌われたら立ち直れない」

「そんな、大袈裟ですよ。レイ様を嫌う人なんていないと思いますよ。大丈夫です」

 彼の事を好きになっても嫌いになる人なんていないと思うわ。そこは断言できます。