「もうそろそろ、離して頂いても……」
「いやだ。また、逃げられたらいやだからね。離さない」
「逃げませんよ」
たぶん。心の中でつけ加えて返事を返しました。それでもレイ様は納得していない様子。
「この前だって逃げたでしょう? なぜ? 話があると言ったのに」
「あれは……時間がなくて、あ、あの、あの……どうしても……」
あの日の事を思い出して、みるみる顔が朱に染まっていきます。レイ様への気持ちを自覚しましたなんて言えるわけもなくて、どう言い訳をしたものか、あたふたする私に何かが覆いかぶさったかと思ったら、レイ様に抱きしめられていました。
「レイ様」
「嫌われたわけではないよね」
「はい。嫌っていません。そんなことあるはずはありません」
だって、私はレイ様が大好きなのですから。
「よかった。ローラに嫌われたら立ち直れない」
「そんな、大袈裟ですよ。レイ様を嫌う人なんていないと思いますよ。大丈夫です」
彼の事を好きになっても嫌いになる人なんていないと思うわ。そこは断言できます。



