婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています


「はい」

 元婚約者の弟。微妙な立ち位置ですが、彼に悪印象はありませんし、婚約解消した今は他人ですから受けても問題はないでしょう。

「兄のことはすみませんでした」

 スティール様の突然の謝罪に足が止まってしまい、つんのめりそうになった私を彼が支えてくれました。

「ありがとうございます」

 ダンスの途中で転びそうになるなんて恥ずかしいわ。

「いえ。それよりも大丈夫でしたか? どこか痛めませんでしたか?」

「大丈夫です。どこも痛いところはありませんわ」

 ちょっとつまずいただけですし、すぐに受け止めてくれたので大事に至らずにすみました。

「よかった」

 心底ほっとしたように微笑んだスティール様はとても優しい方なのでしょう。

 もしも、エドガー様が彼のような性格だったら、もしかしたら、私達は上手くいっていたかもしれません。たらればを考えても、現実は現実ですものね。変わることはありません。

 ふとよぎった想像をすぐに打ち消しました。