「はい」
元婚約者の弟。微妙な立ち位置ですが、彼に悪印象はありませんし、婚約解消した今は他人ですから受けても問題はないでしょう。
「兄のことはすみませんでした」
スティール様の突然の謝罪に足が止まってしまい、つんのめりそうになった私を彼が支えてくれました。
「ありがとうございます」
ダンスの途中で転びそうになるなんて恥ずかしいわ。
「いえ。それよりも大丈夫でしたか? どこか痛めませんでしたか?」
「大丈夫です。どこも痛いところはありませんわ」
ちょっとつまずいただけですし、すぐに受け止めてくれたので大事に至らずにすみました。
「よかった」
心底ほっとしたように微笑んだスティール様はとても優しい方なのでしょう。
もしも、エドガー様が彼のような性格だったら、もしかしたら、私達は上手くいっていたかもしれません。たらればを考えても、現実は現実ですものね。変わることはありません。
ふとよぎった想像をすぐに打ち消しました。



