下世話と言えばそうなのでしょうが、お二人を目にすればそんな会話が飛び出すのも無理はないのかもしれません。
本当にお似合いだもの。
「あんなの気にしたらダメよ」
ディアナの声に俯いていた私は顔をあげて微笑みました。
「大丈夫よ。なんとも思っていないわ」
うそ。
思いっきり気にしているくせに。
虚勢を張って答えたけれど、眩しいくらいに輝く二人の前に私の存在なんてチリのようなもの。足元にも及ばない。
「その意気よ。ほら、ダンスが終わったわよ」
見ると、最後のお辞儀をしているところでした。
ダンスが終わったレイ様がこちらに近づいてきます。
心臓の鼓動が早鐘を打ちます。
「フローラ・ブルーバーグ侯爵令嬢。私とダンスを踊っていただけませんか」
レイ様が手を差し出しました。
私の所に来てくださったけれど、嬉しさと同時に不安な気持ちにもなります。
ビビアン様の後では私なんかきっと霞んでしまう。卑屈になりそうな自分にいつもの優しい眼差しで微笑みかけるレイ様が勇気を与えてくれます。
綻ぶ笑顔に胸が高鳴って手が震えてきました。
「ローラ」
レイ様が呼ぶいつもの私の愛称に、たったそれだけなのに、なんだか泣きそうになりながら「はい」と小さく返事をしました。



