婚約破棄から始まる恋２～捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています

　お母様の後ろから歩いて行きながら、後ろを振り返りました。

　エリザベス様と話をした場所。そこにはもう誰もいませんでした。エリザベス様の姿は見当たりませんでしたが、私たちと同じように挨拶に回っていらっしゃるのでしょう。

　婚約を解消したことは後悔していませんが、ただ一つだけ、未練が残っています。

　それは、仕事に携わった現地に行けなかったことです。

　現地での説明は事業主であるお父様が行ったのですが、できれば、私も現地に赴いて事の経緯を話してお詫びをしたかった。

　領民や現場担当の方々との信頼関係も築けていたと思うから、激怒されてもガッカリされてもいいので、数年間携わった者として、しっかりと話がしたかった。
　今でもそう思っています。

　それが、唯一の心残りでした。