「そういえば、フローラ様は次の婚約者は決まりましたの?」
ケーキを食べ終えて落ち着いたのか、ビビアン様の思ってもいなかった質問にティーカップを持つ手が止まりました。声に邪気は感じられません。悪気はなかったんだと思います。ただの好奇心だったのかもしれません。
「いえ。いません。今のところ考えてもいませんわ」
正直に答えました。
「そう、やはり……」
愁いを帯びた頬に手を当てたビビアン様は、そっとため息交じりに呟きました。
やはりって、どういう意味なのでしょう?
「フローラ様は侯爵家の令嬢。いわば高位貴族の優良物件ですわ。求婚者は引く手あまた。そんな立場でしょう?」



