「それともう一つ」
ディアナが人差し指を立てて続けます。
まだ何かあるのでしょうか?
ビビアン様も頭に疑問符が浮かんでいるような顔。
私もです。すっかり解決したものばかりと思っていましたが……
「侯爵家と男爵家。身分違いとのことでしたが、チェント男爵家は真珠の養殖と貿易で財を成した資産家ですから、テンネル侯爵家が婚姻を結んだとしても損はありませんわ。身分だけは高くても経営は火の車という貴族もあります。それを思えば、身分は男爵であっても十分釣り合うのではないかと思うのです。その一点だけは子息も褒められるところですわね」
ホホホッとディアナが小さく笑い声を漏らしました。
彼女の言う通りなのかもしれません。
私はまだ会ったことはありませんが、コーヒーの他にもいくつか仕入れた食材などもチェスター貿易商会からでした。それが、チェント男爵家だと聞いた時には驚いたのですが、両親は取引先が一つ増えたと喜んでいたので特に気にしていませんでした。



