君しかいない

「成瀬、自宅まで来てごめん。今日は休みだったんだよね、完全に勤務時間外……っ」
「とにかく中へ」

 身体を引き寄せられフワリとコートをかけられ、肩に手がかかったまま成瀬の部屋へ案内された。
 玄関に着くなりガクガクと足が震えだし、今頃になって恐怖が襲う。靴を脱ぎ廊下に上がろうとしていた成瀬の服の裾をギュッと握ると、振り返った成瀬の顔を改めて目にした途端目頭が熱くなりブワッと目の前にフィルターがかかった。

「うぅっ……成、靴脱げな……」
「大丈夫です私がいたします。真尋様、足に触れますが気分が悪くなったらすぐに言ってください」
「う、ん……成瀬だから平気」

 跪いた成瀬は、わたしの足に手を添え履いていたパンプスを脱がせてくれた。そしてリビングへと続く廊下を身体を支えながら歩き始めた。
 リビングのソファに誘導され、タオルを手渡してくれた成瀬が離れないように洋服を掴んだまま腰を下ろす。

「着替えと何か飲み物をご用意いたします」
「嫌、何も要らない。ここに居て、わたしの傍に居て」
「……承知しました」