「蛍、そろそろ家出れる?」

「うん、もう出れるよ。お待たせ」

保険証とか、万が一気持ち悪くなった時用の袋とかは用意したし、準備OKだ。

「車の中で気持ち悪くなったりしたら、すぐ行って。どこかで止まるから」

「ありがとうね。よろしくお願いします」

智明はそう言ったけどすごい安全運転で、特に体調の変化もなく病院に着いた。

「ねぇ、今更なんだけどさ」

「どうした?」

「産婦人科に入るの、恥ずかしくないの?」

「なんで恥ずかしがる必要あるの?」

「だって、周りはみんな女の人だし緊張したりするのかなって⋯」

「俺がそういう器に見える?」

「いえ、見えないです⋯」

なんというか、やっぱり智明は肝が据わってるよなぁ。

女の私でさえ緊張して舞い上がりそうになってるのに、顔色ひとつ変えないで私の隣で平然としてるんだもん。

「高峰蛍さん、中へどうぞ」

私の番が回ってきて、心臓が飛び出そうなくらいドキドキしたまま、診察室に入る。

「こ、こんにちは⋯!」

「こんにちは。そこに座って」

「し、失礼します!」

「面接じゃないんだから、もっとリラックスしていいのよ」

「ふはっ」

先生にそう言われ、隣で吹き出す智明。

こやつ、後から小突いてやる。