智明 side

長い長い、と言っても3泊4日の出張を終えて帰宅すると、俺の最も愛しい人が出迎えてくれた。

久しぶりに蛍に会えた嬉しさで思わずぎゅっと抱きしめたが、スーツがシワになるからと先に脱いでくるよう言われた。

そういえば、さっき一瞬抱きしめた時に蛍の顔色が悪かったような気がする。

着替えたら、少し聞いてみなければ。

急いで部屋着に着替えてリビングに行くと、蛍の姿がなかった。

「蛍? どこ行ったの?」

そう問いかけるも、返事が返って来ない。

俺が着替えている間にどこかに行ってしまったんじゃないかと思って玄関に向かおうとしたら、キッチンの方から咳き込む声が聞こえた。

「ごほっ⋯ごほっ⋯」

「蛍、いるの?」

「ごめん、ちょっとこっち来ないで」

「どうして? 体調悪い?」

「大丈夫、ちょっと風邪気味なだけだから」

蛍はそう言っているけど、明らかに吐いたような形跡があって、ただ風邪気味なだけだとは思えなかった。

「ごほっ⋯げほげほっ⋯」

「蛍、スッキリするまで出しな。我慢しちゃダメだよ」

俺がいるからなのか、嘔吐するのを我慢している蛍。

その背中をさすって、大丈夫だからと繰り返すことしか俺にはできなかった。