智明 side

「ありゃ⋯寝ちゃった⋯」

「奥さん、寝ちゃったみたいですね」

「えぇ、元々お酒は強くないんですけどね、本人はその自覚が一切ないので困ります」

バーテンダーに話しかけられ、軽く会話をする。

すやすやと眠る蛍の頬を撫でると、むにゃむにゃと何かを言っていた。可愛いです、はい。

「すみません、もう一杯いいですか」

「はい、少々お待ちください」

追加でカクテルを頼み、再び蛍の寝顔を観察する。

子供みたいにあどけない表情で寝ているところを見ると、この人は命を懸けてでも守らなければという思いが強くなる。

「お待たせいたしました」

「ありがとうございます」

運ばれてきたカクテルを一口だけ口に含み、しっかりと味わってから飲み込む。

昔からバーには通う方だったが、久しく来ていなかった。

どうせ行くならと、蛍を誘いCHERRY BLOSSOMに来てみたが、早々に潰れてしまった蛍。

そりゃあ、あれだけハイペースで空けてれば早々に酔い潰れるのは目に見えていたが。

「あれ、兄さん?」

「光明、なんでここに?」

「仕事終わりに、ふらっと立ち寄ったんだ。てか、蛍潰れたの?」

「あぁ、かなりのハイペースで空けて、あっという間に潰れた」

俺がそう説明していると、光明は当然のように俺らの席に同席した。

こいつ、昔からこういう奴だよなぁ。