「中村のことなら、安心してほしい」

「何でそれを⋯」

「蛍が考えていることなんて、手に取るように分かるよ。大丈夫、父さんも中村と蛍を接触させないように最善を尽くしてくれている」

「ありがとうね、本当に」

中村さんと接触しなくていいなら、引き抜きの話も真剣に考えなくはない。

あとは、私のスキルの問題だろうから、それまでにきちんとスキルを付けておかないと。

「それじゃあ、そろそろ時間だから仕事に戻るよ」

「うん、今日は夕食いるの?」

「あぁ、いつも通り蛍のことを迎えに行くよ。ちゃんと会社の前で待っててね」

「分かった、いつもごめんね」

「謝ることじゃない、俺が好きでやってるんだから」

「ありがとう、午後も頑張って」

そう声をかけ、私と智明は反対方向に歩き出す。

昨日まではまだ若干ギクシャクしているなと感じていたけど、今日は普通に接することができたと思う。

昼間の大通りは色んな人で溢れ返っていて、賑やかだ。

会社に戻るまでの道中、あっちを見たりこっちを見たりしながら歩く。

「さて、気持ち切り替えて頑張りますか」

私はそう呟いて、軽い足取りで会社に戻った。