私たちは絶品のミートソースパスタをあっという間に平らげ、食後のコーヒーと紅茶を飲みながら、再びお話タイム。

智明がコーヒー、私が紅茶を頼むのは出会った頃から変わらない。

おっと、出会った頃の話は私にとって苦い思い出しかないから、スルーしよう。うん。

「そういえば、この間お父さんから聞いたんだけど、1年後くらいに私のこと高峰製薬の方に引き抜きの話が出てるって本当?」

「本当だよ。あれ、言ってなかったっけ?」

「聞いてないわよ。ていうか、私なんかが高峰製薬に行って役に立つの?」

「大丈夫、蛍の優秀さは知っている。だからこその引き抜きの話なんだよ」

そうは言われても、あんな大会社でやっていけるほどの力は持ち合わせてないんだけど。

「事務員なら足りてるんじゃないの?」

「蛍は事務として引き抜くんじゃないよ。社長秘書補佐だね」

「どういうこと? 智明の補佐をするの?」

「ゆくゆくはそうなって欲しいけど、勉強のためにまずは今の俺の秘書の見習いからスタートしてもらおうと思って」

「車内にいる女の人たちに虐められそう」

「そんなことするやつがいたら、俺が許さないから」

とはいえ、中村さんの件もあったばかりだし、多少の不安は残る。