私と智明は、あれからすぐに自宅に戻ってきたが、私たちの間にはどこか重い雰囲気が流れる。

何と話を切り出すべきなのか、お互いに探りあっているのだ。

そんな中、先に沈黙を破ったのは智明だった。

「蛍、本当にすまなかった」

「ううん、私こそごめんなさい。ムキになって部屋にこもるなんて、いい大人がやることじゃないよね」

「そうさせる原因を作ったのは俺だ。蛍が謝ることじゃない」

智明はそう言ったけど、我に返って自分の行動を振り返ってみるとなかなか幼稚なことをしたなと恥ずかしくなる。

「さっきも言ったけど、蛍がいなかった数日間、本当に何も手につかなかったんだ」

「そうなの?」

「あぁ、仕事に行ってもぼーっとして、家に帰ってきても1人でずっとぼーっとしてた」

「そうだったんだ⋯」

「気持ちは分かるけどシャキッとしろって、秘書に怒られたよ。ついでに、光明からも」

「光明くんも?」

「あぁ、仕事に身が入らないのは構わないけど、蛍を泣かせるなって怒られた」

その話を聞いて、私が知らないところで色々なことが起こってたんだなと知る。

「このまま蛍を悲しませたままなら、俺が蛍を迎えに行くって言わた時は焦ったな」

智明はそう言って苦笑した。