結局一睡もできないまま次の日を迎えた私は、ベッドの上でぼんやりと窓の外を眺めていた。

「蛍、智明くん来てくれたわよ」

「今は会いたくない。帰ってもらって」

昨日の今日で智明に会えないし、会ったとしても話すことは何もない。

とにかく体調が落ち着くまではゆっくりしたい。

「蛍、今日も無理矢理押しかけてごめん。少しでいいんだ、面と向かって話がしたい」

「悪いけど、帰ってくれないかな。今は本当に会いたくないの」

「ごめん、引けない」

私と智明は我慢比べを始めた。

どっちが先に音を上げるのかは分からないが、私だって引けない。

智明には申し訳ないが、帰ってくれるまで部屋から出るつもりはないのだ。

「蛍、もうお部屋から出てらっしゃい。智明くん、ずっと待っててくれてるのよ」

1時間ほど経った頃、お母さんにそう声をかけられた。

しかし、まだ部屋を出るつもりはない。

お父さんとお母さんも、私がここまで頑固な娘だと思わなかっただろう。

「蛍、お願いだから部屋から出てきてくれないか。そんなに拒絶しないで」

「私が引きこもる原因を作ったのは智明でしょ。都合がいいことばかり言わないで」

「それはごめん、だけど顔を見てきちんと話したい。俺は、蛍がいないとダメだよ」

その言葉とともに、微かに聞こえる智明がすすり泣く声。

智明が泣くなんて思ってなかった私は、思わず部屋を飛び出した。