智明 side

｢ごめんね、あの子部屋から出たくないって言うのよ｣

｢いえ、大丈夫です。こうなってしまったのは僕のせいなので｣

｢そうなのね。夫婦喧嘩？｣

｢喧嘩⋯というか、僕が一方的に蛍さんのことを傷つけてしまいました｣

俺が中村を抱いたのが嘘だとはいえ、蛍を傷つけてしまったのは事実だ。

だから、部屋から出たくないという気持ちを尊重して今は無理に会わない方がいいんじゃないかと思う。

｢何があったのか聞かないんですか？｣

｢智明さんが話してくれるまで、私は何も聞かないわよ。多分、お父さんもね｣

やっぱり、蛍のご両親は素敵だ。

でも、きちんとケジメをつけて話さなきゃいないと思うから、俺は全てを話した。

お義母さんは(途中参加のお義父さんも)俺が話している時は何も言わず、ただ黙って話を聞いてくれた。

｢あの子はあまり男性と付き合ったことがないし、智明くんのことを心から愛してると思う。だからこそ、ちょっとショックが大きかったと私は思うよ｣

｢ちゃんとした恋愛経験をさせなかった私たちも悪いけど、多分本人なりに色々考えてると思うのよね。だから、もう少し放っておいてあげてくれないかしら？｣

｢俺のこと、責めないんですか？｣

｢責めないよ。智明くんは何も悪いことしてないじゃないか。中村さんが言ったことが嘘だってきちんと順を追って説明すれば、蛍と仲直りできるよ｣

｢そうそう、あまり思い詰めないでね｣

お義父さんとお義母さんにそう言われ、俺は涙が出そうになるのを必死に堪えた。