「少しずつ思い出してきたかな?」

「いえ、全く。記憶にございません」

「あのね、蛍さん。政治家が悪いことした時にシラを切るようなセリフを繰り返すつもり?」

「蛍、思い出したなら正直に言いなさい」

この2人はデリカシーってもんを知らないのか?

26歳の女性が、ワンナイトしたかもっていう朧気な記憶思い出しました!なんて言うと思って?

「私、お酒で酔ったことないもの。泥酔なんて有り得ない」

「何言ってるんだ、蛍。お前は超がつくほど酒に弱いだろ」

「それはお父さんでしょ。いつも泥酔して、私かお母さんが迎えに行くんだから」

「あの、蛍さん。正直言うと、君はすごくお酒に弱いと思う。外で飲む時は気をつけた方がいいよ」

え、自覚ないだけで私めっちゃお酒弱い?

いやでも、泥酔したことなんてこのかた一度もないし、きっとお父さんと高峰さんの勘違いだよね。

「ていうか、たとえワンナイトしてたとしても、お父さんの前では言わないから」

「大丈夫だ、蛍。お父さんその手の話苦手じゃないから」

「いや、私が嫌なのね!?」

「蛍さんは表情がクルクル変わって面白いね」

「面白くないですから!」

さっきから私ばっかり恥ずかしい思いしてるし、穴があったら入りたい。