「高峰智明、29歳。趣味は映画鑑賞で、犬が大好き。他に聞きたいことあれば、何でも答えるよ」

「中原蛍、26歳。趣味は特になしです」

「さっきも同じこと聞いたよ。犬派? 猫派?」

「強いて言うなら犬派です」

「じゃあ僕と同じだ」

「すみません、愛想のない娘で⋯」

「いえ、このくらいの方が落とし甲斐ありますよ」

そう言って、高峰さんは微笑んだ。

いや、待て待て待て。

私は落ちる気ないからね?

「蛍さん、そんなに僕との結婚が嫌かな?」

「はい、全力でお断り致します!」

「ごめんな、蛍。お前は今日から高峰さんと暮らすんだよ」

「だからなんでッ!?」

もう情報量多すぎて頭パンクしちゃうんだけど。

「お母さんも蛍がお嫁に行くことを楽しみにしてるんだよ」

「そういえば、お母さんは?」

「今頃アメリカにいるんじゃないかな?」

「え、なんで?」

「気分転換に旅行だって」

「いやだからなんでッ!?」

はぁ、ツッコミもそろそろ疲れてきた。

娘のお見合い(?)の日に旅行とか、お母さん相変わらずぶっ飛んでるな。

「蛍さん、不満に思ってることを具体的に言ってくれないと僕も困るよ」

「そんなこと、言われても⋯」

真剣な眼差しでそう言われ、私はつい目を逸らした。