「なんで区役所に?」

「なんでって、入籍するために決まってるでしょ」

次の日、買い物に行くよと言われて連れ出され、なぜか区役所の前にいた。

運転は智明くんがしてくれたから、行先決めるのは自由だけどさ。

今日入籍するなんて聞いてないんだけど?

「なんで今日なんですか?」

「善は急げっていうでしょ」

「でも、私智明くんのご両親にまだお会いしてないんですけど⋯」

「その必要はないよ。俺の方から話しておいたから」

「そういう問題じゃない気がするんですけど⋯」

「細かいことは気にしない。ほら、行くよ」

車から降りるなり私の手を取って、ズンズン歩き始める智明くん。

智明くんは足超長いから、足の短い私はついて行くのが大変だ。

「婚姻届、1枚ください」

「智明くん、本当に私と結婚していいの?」

「もちろん。だから蛍も、俺と結婚する覚悟決めて。明日から、忙しくなるんだから」

「明日からお仕事ですか?」

「いや、違うよ。まぁ、明日になれば分かるから」

なんか、すごく嫌な予感しかしないんですけど。

内心すごくドキドキしながら、智明さんから受け取った婚姻届を記入して提出した。