智明 side

光明から言われた場所に向かいながら、中村はなぜその場所を選んだのか疑問に思う。

赤ちゃんを連れて、わざわざそんなところまで行く必要があるのだろうか。

「多目的トイレなんて、何個あるか分からないし手分けして探そう」

「じゃあ俺は上から回っていくから、兄さんと蛍は下から回ってくれ。見つけ次第、すぐ連絡する」

「あぁ、頼んだ」

二手に分かれて探すが、休日で混み合っているし思うように探せない。

中村がなぜこんなことをするのか、こんなことをして何がしたいのか俺には全く理解できない。

「智明、見つけた!」

蛍の声がして多目的トイレの中に飛び込むと、そこには大泣きをしている明将の姿があった。

「明将!」

「ぱぱぁ〜!」

「痛いところはないか?怖かったな」

明将は手すりに手を縛られていて、文字通り大泣きしていた。

縄を解こうとしてもがっちり縛られていて、簡単には解けそうにない。

こんな小さい子の手を縛るのに、どれだけがっちり縛っているんだ中村は。

「ちょっと待ってろよ、すぐ解くからな」

やっとの思いで縄を解き、明将をこれでもかというくらい抱きしめる。

中村のやつ、絶対ただじゃおかねぇ。