光明 side

兄さんと蛍がネカフェに向かってすぐ、俺は中村に電話をかけた。

<何回も電話かけてきてどうしたの? 私が恋しくなった?>

「そんなんじゃねぇよ。さっさと居場所を教えろ」

<そんな態度で教えろって言われて、教えると思った? 人にお願い事ある時は、お願いしますでしょ>

この女、どこまでも調子に乗りやがる。

そもそも、俺がこの女に脅されて付き合い始めたのが全ての始まりだった。

蛍と明将、それから兄さんを守りたくて選んだ道なのに結局3人を苦しめている。

「お願いします、場所を教えてください」

<あは、そう言われて教えると思った? ほんと単純だよね光明くんは。じゃあ、今から私が言う場所に1人で来てよ。1時間以内に来ないと、明将くんがどうなるか分からないよ?>

「指定の場所を教えてください」

<ヒントなら教えてあげる。都内のどこかのショッピングモールにある、2階の多目的トイレ>

それだけ言うと、中村は電話を切ってしまった。

都内にあるショッピングモールを1つ1つ当たっていたら時間がないが、電話が切れる直前館内アナウンスが微かに聞こえた。

中村がいる場所は渋谷、ここからさほど遠くない。

「もしもし兄さん、中村は渋谷にいる。───に来てくれ!」

兄さんに電話でそれだけを伝え、俺は目的地まで走った。