月日は流れ、あっという間に臨月に突入。

つわりがめちゃくちゃしんどくて何回も心折れそうになったけど、その度に智明が傍にいてくれてなんとか臨月までたどり着くことができた。

赤ちゃんの性別は、赤ちゃんがへその緒をお股に挟んでいるからまだ分からない。

生まれてくるまでのお楽しみってことで、赤ちゃんからのサプライズなのかなって思ったり。

「蛍、何やってんの」

「書類落としちゃって、拾おうと思って…」

「そんな格好して転んだらどうする。ほら、座って。俺が拾うから」

「うぅ…すみません…」

お腹が大きくなり、落とした物を拾うのも一苦労だ。

さっきみたいに自分で拾おうとして智明から危ないだろ、って声を掛けられるのは日常茶飯事で。

でも、できそうだなって思っちゃうんだもん。

「まもなく生まれるのか…」

「そうだよ。予定日まであと1週間だからね。いつ生まれてもおかしくないって先生言ってた」

「そうか。早く会いたいな」

そう言ってフッと微笑む智明の顔は、もう完全に父親の顔で。

すごく柔らかくて、優しい顔をしていた。

そうそう、智明といえば、彼はいつ陣痛が来るか分からないということで、仕事を全て在宅に切り替えた。

必要な時だけ出勤し、それ以外はずっと自宅で仕事をしている。