「ねぇ、智明」

「どうした?」

「2人で、この子幸せにしてあげようね」

「当たり前だ。俺たちのところに生まれてきてくれて良かったって心から言ってもらえるといいな」

「うん、それが一番だよね」

ゆっくりと沈み始めた夕日を見ながら、そんなことを話す。

まだ少し先のことなのに、今から未来が楽しみだ。

「さて、帰るか」

「そうだね。少し冷えてきたもんね」

「俺の上着羽織っとけ。風邪引いたら大変だぞ」

「うん、ありがとうね。智明は寒くない?」

「寒くない。そんなにヤワじゃないしな」

智明と手を繋いで、来た道をゆっくりと引き返す。

今日は夕日が綺麗だったから、明日もきっといいお天気になると思う。

「家着くまで寝てていいからな。疲れただろ」

「少しだけね。でも、起きてるから平気だよ」

車に戻り智明とそんな会話をしたのも束の間、私はいつの間にか夢の中に入っていた。

ぼんやりと遠のく意識の中、智明が誰かと話している声が聞こえた。

何を話しているかは分からないが、相手の名前はしっかり私の耳に届いた。

"中村"という名前が私の耳に届いたが、眠気には逆らえずそのまま深い眠りへと落ちていった。