「あの、お父さん⋯私、この人と婚約した覚えないんですけど⋯」

「お前には言っていなかったが、この方が婚約者の高峰智明(たかみねともあき)くんだ」

「はぁ⋯どうも⋯」

「初めまして、高峰智明です。よろしくね」

中原蛍(なかはらほたる)26歳、婚約者がいたらしいです。

ていうか、高峰さんってどこかで見たことあると思ったらあの高峰製薬の社長さんじゃん。

こんなすごい人と婚約なんて、今まで隠してたお父さん許すまじ。

「蛍さんの趣味は何かな?」

「大した趣味はないですね⋯」

「それはいいことだ。これから、沢山色んなことに挑戦できますね」

「はぁ⋯そうですね⋯」

なんだこのポジティブ男。

大した趣味はないですって言って、こんな返答されたの人生初かも。

それにしてもこの人、めっちゃ顔整ってるし身長が高くてスタイルもいい。

お父さん、ほんとにどうやってこんなハイスペックな人捕まえてきたんだ。

「父親の私が言うのもあれですが、蛍は妻に似て美人でね。学生時代はモテモテだったんですよ」

「ちょっとお父さん、余計なこと言わないでよ」

26歳にもなって学生時代の話とか、高峰さん絶対呆れてる。

顔には出さないだけで、何だこの親子って思ってそうだもん。