「本日から新しくキリヤに入りました、三橋桃花です。よろしくお願いします」
 
 彼女と再会できたあの日のことを、俺は一生忘れないと思う。運命かもしれない、などと思ったことは内緒だ。
 フロントカウンターまで挨拶に来てくれた三橋さんを見て、すぐにあの時の彼女だとわかった。顔色はすっかり良くなり、以前よりも少しだけふっくらとした印象だった。夢にまでみた彼女の笑顔は花のように可憐で、話す声は鳥の(さえずり)のように愛らしかった。

「好きだ」と確信した。

 まるで、中学生の恋みたいだな、と我ながら思う。どうも昔から恋愛には不器用なのか、これまで特定の女性と長く続いたことがない。それに、恋人がいなくても何の支障も無かった。仕事だけで十分だった。けれども今は。

 ——三橋桃花が欲しい。
 そう思っている。