「吉崎様はもちろんのこと、月城様にもご満足いただけるお式にするのが私の仕事ですから、どうかお気になさらず……」
「由華ちゃん」
言葉を遮るように、蒼空は私の名前を呼ぶ。
「こんな形で再会したわけだから、俺に対してこういう対応をするのは仕方のないことだとは思う。だけど、その畏まった敬語はやめてもらえないかな」
「そういうわけには……」
ただの同級生として再会していたならば、私はすぐにでも『蒼空』と呼び掛けているに違いない。
けれど今の私の立場では『月城様』と畏まって呼ぶしかないのだ。
「じゃ、せめて二人の時だけでも」
「二人になることなんてないんですけど」
この仕事をしていて、プランナーが新郎と二人きりで何かをすることなどありえない。
常に新婦様か他のスタッフが付いているのだから。
「じゃあ……これ」
蒼空はジャケットの胸ポケットから一枚の名刺を取り出すと、私の手を取って握らせた。
「俺の連絡先だから。いつでも連絡くれると嬉しい」
突き返すのもなんだし、とりあえずは受け取るのがマナーだけれど、きっと連絡することはないだろうな、と思いながら私は手を振って去っていく蒼空に軽く一礼した。
急いで吉崎様の元へ戻ると、当然というか予想通りというか、ご機嫌斜めになってしまっている彼女を宥めながらも、結婚式プランはほぼほぼ決まってしまったのだった。
「由華ちゃん」
言葉を遮るように、蒼空は私の名前を呼ぶ。
「こんな形で再会したわけだから、俺に対してこういう対応をするのは仕方のないことだとは思う。だけど、その畏まった敬語はやめてもらえないかな」
「そういうわけには……」
ただの同級生として再会していたならば、私はすぐにでも『蒼空』と呼び掛けているに違いない。
けれど今の私の立場では『月城様』と畏まって呼ぶしかないのだ。
「じゃ、せめて二人の時だけでも」
「二人になることなんてないんですけど」
この仕事をしていて、プランナーが新郎と二人きりで何かをすることなどありえない。
常に新婦様か他のスタッフが付いているのだから。
「じゃあ……これ」
蒼空はジャケットの胸ポケットから一枚の名刺を取り出すと、私の手を取って握らせた。
「俺の連絡先だから。いつでも連絡くれると嬉しい」
突き返すのもなんだし、とりあえずは受け取るのがマナーだけれど、きっと連絡することはないだろうな、と思いながら私は手を振って去っていく蒼空に軽く一礼した。
急いで吉崎様の元へ戻ると、当然というか予想通りというか、ご機嫌斜めになってしまっている彼女を宥めながらも、結婚式プランはほぼほぼ決まってしまったのだった。

