「やっと伝えたのね!」

「うわっ! びっくりした!」
 私と和真の声が重なった。

 先生が教室の入口で腕を組みながら立っていた。

「先生、いつからいたんですか?」
「ちょっと前から。っていうか、実は私、何回も放課後教室こっそり覗いていたんだけれど、お互いにお互いの寝顔見つめている表情を見てたら、両想いなのにすれ違い?って思ってキュンとなってモヤモヤしてたわ。最近も覗いてみたらふたりが仲良さそうに……」

 和真に視線を向けると、彼は固まっていた。

「あっ、この子……」

 先生は机の上のシロクマに目を向けた。

「先生、彼は今日、一緒に卒業式に参加しました」

 私は先生に伝えた。

 それから、和真の夢に彼が出てきた事と、彼がおばあちゃんの元へ行った事も伝えた。

「あと、先生に伝えて欲しい事もあるんだ。大好きな教室で過ごせて幸せでした。ありがとうございました。って伝えてくれる?って、僕の夢の中で彼が言っていました」

 先生は目を潤ませながら言った。

「そっか……。三人共……卒業、おめでとう!」


 改めて実感した。今日、この学校、この教室を卒業したのだと。

私達は、この教室の枠から出てゆく。
 
 同じ教室で一緒に過ごせる確率なんて、物凄く低いから、過ごせた時間、出逢えたことは、とても奇跡。