卒業式が終わった瞬間、頭の中に彼が出てきた。私は起きていたのに。そしてその頭の中に流れてきた映像では、彼がおばあちゃんと出会って、私に手をふり、消えた。

「彼ね、おばあちゃんに会えたんだと思う。だからね、もう彼は私達の近くにはいないよきっと」

「一緒に卒業したんだね」

「うん」

私は天井を再び見上げた。

「そうだね。私達、みんな、一緒にあの枠から出ていくんだね。同じクラスだった人達も一緒に枠から出ていって、同じ時空にいるけれど、別々の道に進んでいく」

「うん」

「ねぇ、私たちも、別々の高校じゃん。もう会えなくなる?」
 
「……」

「私ね、和真の事、好きだったんだ。でも、和真はきっと私の事は好きじゃないから、もう会う事はなさそうだね」

「えっ……。会えないの嫌だ。会いたい。だって、僕も、葵の事が…好きだから」

「ふふっ。なんで、語尾が小声なの? っていうか知ってる! だって、ここで眠っている私の頭を撫でながら、和真が私に好きって呟いてたの、聞こえてたもん。しかも、こんな事してるの、葵にばれたら恥ずかしすぎるって呟いてたよね!」

「うわ! それ、聞いてたの?」

「うん、和真いる時、眠ったふりいっぱいしていたから他にも知ってる。言おうか?」

「いや、もう、やめて! 恥ずかしい」

和真の耳が真っ赤になっていた。