「天井に何かあるの?」

 突然の声に驚き振り向くと、和真が教室の入口に立っていた。

「どうしたの? 忘れ物?」

「葵こそ、どうしたの?」

「えっ、余韻に浸っていた」

 彼は、私の隣の席に座った。

 私は、上を見上げていた理由を話した。

「それじゃあ、夢の中の彼は、何年も同じあの枠の中にいるのかな?」

 和真がちょうど上の辺りを指さしながら言った。

「そうだね」

 私は上を見上げたまま答えた。
 彼は誰よりも綺麗な、あの点かな?

「あっ、あのね、枠の中にいるんじゃなくて、いた。だよ!」

「じゃあ、もうここにいないのかな?」

 和真は制服のポケットからシロクマを出して机の上に優しく置いた。